かつて国を追われ祖国を失った民族がいた。
祖国を失った民族の行く末は悲惨なものだった。
どこでも激しい弾圧と差別を受けることとなった。
そこに平等というものなど存在しなかった。
ダブルスタンダードの負の面だけを受けることになった。
どっちに転んでも彼らは負の面だけを被った。
時は流れ貧しさや弾圧や差別を強力なバネとして祖国を失った民族は勉学と努力に努力を重ねやがて各国の中枢部で働くようになった。
さらに時は流れ、同志も増え、おもな産業をその手中に入れ、新聞テレビなどのマスメディアも手に入れた。
そして気がつけば世界をコントロールできる立場になっていた。
いつの間にか彼らは権力側にいたのだ。
そこで彼らは思った。
この地球から差別をなくさなければ。
世界は平等であるべきだ。
かつて彼らはどんなに平等を渇望していたことか。
彼らは人間の本性がダブルスタンダードで、差別やいじめをする動物であると何世代にもわたる経験から痛いほど分かっていた。
地球からいじめや差別をなくし平等な世界にするには、人間たちを教育指導する親のような存在が必要だ。そして、親にはダブルスタンダードが許される。なぜなら教育指導する人間が必要だからだ。
彼らは差別のない平等な世界、弱者に寄り添う世界を築くことにした。
平等な世界を作るにおいて障害となるのは国境である。愛国心である。
国境や愛国心で他人と自分を差別するから戦争が起こる。
国境と愛国心を取り除き地球が一つの大きな家族となればもう二度と戦争は起こらない。
彼らはその大きな家族の両親になることを決めた。
親なので子供には厳しく当たる。
たとえダブルスタンダードと言われようが親なので構わない。
徹底的に理想を叩き込むのだ。
逆らう子供には容赦はしないのだ。
そうだ!子供を新聞テレビという教育指導機関に通わせよう!
これはいい考えだ。親は他のことで忙しいんだから。
その間は新聞テレビに子供の教育と指導を任せることにした。
地球の資源は限られている。
このまま好き勝手にやられては資源が枯渇してしまう。
そのためにも平等というのは好都合だ。
みんな平等なら争いごとも起こらない。
みんな平等ならいじめも起こらない。
みんな平等なら過剰に地球資源を消費することもない。
みんな平等ならもちろん差別も起こらない。
みんなが一つの家族のように暮らせば、世界から戦争が消え、いじめが消え、差別が消える。
平等のもと、みんなが幸せになれるのだ。